主人に対してもぞんざいなメイド

毒舌メイド 汐王寺茉莉花

ブラック・ラグーンのロベルタを出してしまうと続くメイドの存在感がかなり薄くなってしまうかも知れません。ただロベルタというキャラから見えるのは、主人がもし命の危機に瀕するような緊急事態に苛まれた際に活躍する武装メイド、という見方も出来る。実際に彼女が始まりというわけではありませんが、作品によっては主人のためを思って自らの危険すら顧みずに戦場という舞台に邁進するメイドもいるほど。通常ならありえないシチュエーションですが、これも日本のクリエイターだからこそやり遂げた新境地でもある。

主人とメイドは主従関係にあるもの、そういう価値観が誰にでもあると思います。そうだろうと疑っていない人もいますが、現代において主従というよりは『雇用関係』という風に事改めるべきだ。事実、今も昔もメイドとして奉公していた女性たちは主人だから忠誠を誓ったというよりは、仕方なく奉仕していたといえる。

そういう視点では仕方なく付き添いをしなければならず、無表情で身の回りの世話を甲斐甲斐しくしているように見えて、実は鬱屈が溜まっている毒舌なメイドを表現した作品があります。こちらの作品はすでに完結していますが、一時期はアニメ化もされて話題を集めた『まりあ†ほりっく』の『汐王寺茉莉花』だ。

彼女にしても見て思ったのは、これも大概メイドとはいえないだろうと思いましたが、面白いからいいのかなと軽く流してしまった。実際のメイドと当てはめても、そのぞんざいな態度は人間的にも考えさせられる部分がある。

主人に対してぞんざい過ぎる

汐王寺茉莉花というキャラクターに対して言えば、誰に対しても辛辣で分け隔てなく罵声を浴びせるキャラクターだ。作中の(一応)主人公の少女にも出会い頭に『メス豚』とあるまじき対応をしてみせた。誰もがその台詞にきょとんしただろう、筆者ですらいきなり過ぎる展開には笑いを通り越して呆然となった。ここで言うならばキャラが確立化されたと言えるでしょうが、彼女ほど誰にでも冷静なツッコミをしつつ、加えていじり倒そうとしたら容赦のない人でもある。

彼女は作中においてもう一人の主人公であり祇堂鞠也というキャラの側つきとなっている。共に行動し、彼の命令には忠実に行動をすることからも忠誠心は高いように見えますが、実際には彼の行き過ぎた命令に対しても例外なくツッコミを入れる。ただその分だけ鞠也に対しても不平不満を溜め込んでいることもあって、それまでの生活で培ってきたストレスを表に出さないためにも、感情を滅多に表情で表現することはない。むしろそのはけ口として主人公の少女には一切の慈悲も情けもかけない。

こう見るとメイドとしては失格だと思うかもしれませんが、実際の史実に照らし合わせてみるとあながち茉莉花というキャラの行動も現実のメイドにはありえただろう姿なのです。

ケースによっては

主人とメイドの関係が良好な場合もある、しかしメイドというものが著しく蔑ろにされたものであるとばかりに差別される職業であることを忘れてはいけない。それを意味するように、中東圏におけるメイドでは劣悪な労働環境で、時としてメイドが不満もあって雇用主の元から逃げ出してしまうという話もざらだ。また裕福な家柄ともなると、財産管理などを任されるケースもあるせいか、窃盗などの犯罪に及んでしまうメイドもいるという。

もちろんですが、そうした犯罪行為に及んだ場合には例外なく法の下で裁かれてしまいます。あるケースでは、雇い主の赤ん坊の世話をしていた女性が食事をあげていたところ、気管に詰まらせてしまって斬首刑に処されるというショッキングな顛末になったケースもあるという。

雇い主にすれば屋内の掃除などをしているだけでそこまで高く雇うつもりはないと示すところもあるのかもしれませんが、それが雇い主とメイドの間にある溝を広げかねないということも懸念されている。

茉莉花はまだ優秀な方

メイドがどうしてここまで仕事として受け入れられているのかは、誰でも手軽にできるというのがある。そのため簡単な家事が出来れば難しくないが、それも人によって変わってきます。メイドとして雇われながらも全く仕事ができないものもいれば、1つ頼まれれば10の仕事を片付けてくるといった優秀な人もいる。この作品におけるメイドの茉莉花についていえばそういう優秀なタイプだ。主人の命令に対して不満などを溜め込むこそすれど、基本忠実にこなしている。

現実に働いてもまともに生計が成り立たないメイドは山ほどいる中で、主人に不満はあっても何不自由なく過ごしている点では彼女のメイド人生は満たされているようだ。またメイドとしても、蔑まされて罵られることに喜びを覚える男性なら、至福の時間が過ごせるかもしれません。かなり少ない需要ではあると思いますが。

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